ゴムボート

水木しげる

せっかち

右の足首と膝と腰がなんか痛いのと24時間耳鳴りがまたもう1段階ボリュームアップしたので昨日、整体なのか整骨なのかカイロプラクティックなのかよくわからないがとにかく5500円払うとボデーをなぞられまさぐられ脊髄や頚椎のねじれを正すぞと謳っているとある一室に行った。近所ってのもあるが、HPの老人院長の写真がすべて伏し目がちで一切笑ってなかったので信頼出来ると踏んで予約した。きのうで通って3回目になるが、施術後に毎回「どうですか?」とおれの体をまさぐり終えた老人が訊ねてくる。

むかしのぼくだったら下手におもねって「体が軽くなりました!身長も伸びました」とおべっかや嘘を使っていたのだろうが今は違う。

耳鳴りを止めるためなら自意識など突き放せるので多少険悪になってもいいから正直にありのままを老人に伝え、それに鼓舞され早めに本気を出してもらう、という天才的な策を敢行してる。全3回とも「体がなんか熱いってのは実感できるが、正直あまり変わらない。」と伝えてる。おれの首をなぞりながら聞こえよがしに「なるほどな」などとまるで手ごたえがあったみたいに嘯いてたそれもどうせ演出なんだよと一蹴するみたいに。心が痛えぜ。だが事実だ。甘納豆や海苔の缶など持っていったら一撃奥義をすぐ出してくれるかもしれないがまだ3回しか通ってないのでそこまでしてやる義理が構築できてない。

f:id:araihama:20200311210204j:plain

帰り道の信号のない横断歩道で車と向かい合ってるおばさんを見た。これはなんだ、と歩みを緩めながらその状況を伺っているとおばさんはさっと車に道を譲った、のだが後続の車をまた通せんぼしていた。トンチキなことはするくせに小雨からは身を守るおばさんのその矛盾がひどく生生しくってさ、おれも余生をああやって過ごすぜと思った。

 

f:id:araihama:20200310221114j:plain


さようなら