ゴムボート

水木しげる

余計な

ネトフリでクィアアイっていう凄く面白くて泣ける番組がある。ファブ5という5人の天才が野暮ったい奴を内と外から改革させるってテーマの番組なんすね、その回の主人公である改革を受ける人物は、番組内では主に依頼者(主に身内)から他薦されたというテイで紹介されるんですが、(自薦パターン回もたぶんあったと思う)ぼくねー、これ絶対他薦じゃなくて自薦だと思うんですよ、ていうか自薦じゃないと駄目。おのれから「ファブ5に変えてもらいたい!会いたい!」って望まないとあんな良くならない。そもそも、身内や友達から一方的に「あんたクィアアイでたら?」なんて言われたら「おれって改造されなあかんぐらい内も外もみっともないことになっとるんか?」ってピストル持って反発するじゃないですか。

そのクィアアイ見てて思い出したことがある。私が中学生の時、母から急に「ミキ姉の旦那にあんた改造してもらうように頼んだから」と告げられてショックだった。ミキ姉(ミキねぇ)ってのは母の友人で、まあギャルみたいな人で、つまりギャルの旦那だからそいつもチャラい奴なんですよ。それより身内である母が、我が子がダサくて気持ち悪い事になってるのを認知しやがってて、ファブ5でもないただのチンピラに改革を依頼してたことがショックでさ、おれったらそれを聞いてすぐ、階段横の壁にパンチしてね、「死ねえ!」って空いた穴むかって怒鳴ったりましたわ。

そこからは花火がよく見えるってことでいっぺん二歳下の弟とミキ姉んち行った事あるんですけど、ミキ姉の旦那が庭のとこで仕事の後輩みたいなんと喋っとんですよ、私がミキ姉の息子をあやしてたら「まあ大ちゃんはどうやろイケメンやから、、云々」って庭の方から会話が聞こえてきて、大ちゃんとは一緒にきてた私の弟のことなんですが、つづけて聞き耳を立ててたら「まあ兄ちゃんのほうは童貞顔やから童貞やろ」って聞こえてきた。

その下卑た会話の全容を把握してしまったおれは内ポケに手をさしこみ、ピストルを。自作の寸鉄詩で包んであったピストルを取り、上空の花火に気を取られているデリカシーのないミキ姉の旦那のこめかみに銃口向けた。花火の炸裂音にかぶさるタイミングを聞きはからい、バンと一発打ち込んだ。満開と炸裂音の時差が少ない場所で良かった。全ての花火が打ち終わった頃に警察がやってきて私は懲役300年をくらった。

 

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猫の選択を尊重してんので、こっちのほうがいいぞと窓の方に寄せてやることはしない。そいつにとったら壁のほうがいいかもしれないんで

 

さようなら