ゴムボート

ドデカミン

グリッチ物語

 

テクノロジーが加速しまくり、デジタルが現実に喰い込みすぎた昨今において、これは象徴的な出来事だ。

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庭がグリッチを起こしたのである。

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近頃までふつうのなりをしていたのに。

 

 いずれ近い未来に「仮想現実」「非現実」なんて言葉はもう死語となり、すべての空論がこの「現実」の名を冠することになるだろう。

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そしてそんな近未来にも少なからず不具合は生じる。シンギュラリティより先駆け、その不穏の萌芽ともいうべき現象が、庭に起こった。

 心当たりがなかったといえば嘘になる。私は件の庭がグリッチを起こしたその平日、ひとりでダルマ落としをしていた。

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おそらくそれがきっかけとなったのであろう。私はダルマ落とし用の柄がほっそほその木槌で一番下段の青い円柱の側面を叩いた、はずであったが目測を誤り、側面の青の塗装をかすめるに終わった。ただの空を打ち抜いただけの木槌の行方を、座椅子を占める猫が眼だけで追う。

ひとりでやっていたのだから順番など無い。次のターンもアタボウに私の番だ。気を取り直し、柄がほっそほそ木槌を手首だけで振りかぶった、その時であった。

締め切ったガラス戸の向こう、庭の方から世界がずれる音がした。

 

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かねてより経験してきた現実とは大きくかけ離れた非現実が現前せしめていたのだから、言わずもがな私は驚愕をした。下痢グソも出た。

あまりの出来事に狼狽え方すら失念した私は、ひとまずダルマ落としの続きをしようと、冷静とは似ても似つかぬ非現実逃避のため、室内へ体を戻す、すると先程までただただ屹立していただけのダルマ落としが、庭のずれに干渉されたかのようにずれていることに気づいた。

 

 

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トータル・リコールな体勢のまま自立するダルマ落としのグリッチに視線を預けたまま、妙な落ち着きに取り入られていた私は、未だほんのりと温い下痢グソをケツとズボンの間に貼りつかせたまま自身の今までの素行を疑っていた。

麻薬、覚せい剤の利用はおろか酒すら飲まぬ私だ、ちなむと煙草も博打もしない、先程まで飲んでいたのもドデカミンだけだ。

気が狂ったのは私の方ではなく、世界の方だった。奇異は立て続く。

廊下の方からも世界がずれる音がした。

 

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なんとなくの察しにより、諦念にかられていた私は、抜き足差し足なんて余計なことはせず脱俗の様相を湛えたまま廊下へ出向いた。シャワー室の壁面に貼っていた水道屋のマグネットステッカーが二枚ともグリッチしていた。すでに出し切っていたと思っていた下痢グソが放屁と抱き合わせる形に飛び出す。

時折無償でポストに投函されているため惜しい気はしなかったが、イメージキャラクターの内山氏のずれを目の当たりにし、心が痛み、世界のほうが狂っているという思いを自身の中で殊更に強く、強く、強く根付かせ、その所信を生来からの極度の末端冷え性、極度の近視、極度の猫背同様に属性に落とし込むまでに至った。

 そんな疑心に身を染めた私に、馬鹿みてぇに出し抜けではあるが、降りてきたのだ。立て続けに私の元に降り注いできたグリッチハザードに乗じて、降りてきたことのなかったこの私に、降りてきたのだ。それは、この狂った世界を立て直す卓見。

 グリッチグリッチをぶつけたら直るんじゃないの?」という閃き。

ついでではあるが、世界を正しくしたい、などといった少年ジャンプめいた願望が自身のなかに息づいていたことに気づき、人知れず赤面もした。猫には見られていたかもしれないが。

グリッチグリッチをぶつけるとは要するに-1✕-1=1の操作を実際に行うということだ、よくわからないけど。

早速私はImageGlitcherを検索し「Drop image Here」の案内に従い、ずれてしまった世界をそこに投入した。音もなく静かに生成は始まった。頼んます!もとに戻ってくれ!

 

 

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よけーに悪化したよ。クソが。

憤然とする私を諌めるように、ケツ周りの下痢グソが冷めていくのを感じた。