ゴムボート

水木しげる

スリングショットの思い出

小学生時ふたつ隣の町の公園でシンプソンズのバートがいつも片手に携えてそうな感じのY字のあれ、(作中で使用してるのかどうかわからない)つまりスリングショットを拾った。

明るい発色からして玩具に違いないとはいえしっかりとした作りで、今思うとあれは樹脂だったのだろう

そのY字樹脂を拾い上げ、弾丸となる小石を見繕い、早速そばの滑り台出口のひらべったいステンレスに標準をあわせプルプル引き伸ばしてたゴムを放つと、バキンとすごい音でむちゃくちゃへこんだ。小石も炸裂して欠けた。私はその瞬間に悟ったね。これふつうに人間おっ死ぬぜ(おっちぬぜ)、って。

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弟と一緒に公園に来てたが、この瞬間に同席させてなくてホッとした。だってチンピラの弟がこのスリングショットの威力を見てたらスゲーや!とたいそう喜んでこの凶器を欲するに決まってる。(弟は中学になると工事現場のコーンの先端でピカピカ光るあれをよく盗んできていたし、家の前の道路によく爆竹を撒いていたし、図書館の横断禁止の芝生エリアに入って立ちションもしていた)

私はすぐに砂場まで行き、穴を掘りはじめた。湿り始めたぐらいからもう20センチ先深くまで掘るとどん詰まりになったためそこにスリングショットを埋蔵した。だれかの忘れ物の間違いないのだが、その誰かが罪を犯す未来を前もって阻止するのだから、隠匿というよりかは施しなのだと己に言い聞かせたからわずかにしか胸は傷まなかった。

弟との帰路のなか最悪の未来を夢想してしまってた私は、家に着いたしそろそろ飯どきだったがいてもたってもあれになったから、公園に忘れもんしたと母に言い、さっきは歩きで行って帰ってきた公園に自転車で向かった。

自分は子供だったので存分に子供のやらんとすることがわかる、やつらはみだりに穴を掘る。鼻汁口汁を垂らしながら。明日にでもスリングショットの持ち主か、持ち主でもない誰かが掘り起こし、禍事が起きるに決まってる。さっき埋め立てた場所をまた掘り起こすのは骨だったが、大いなる者からのMISSIONだと自分に課すことで容易に再会できた。

私は公園の外の硬い歩道にスリングショットを置いて、欠けてた塀の一部であろうコンクリを何度もぶつけてぶち折った。根本から使用できないようにしたのである。

家に帰ると、たぶんシチューだった。テレビをつけようとしたら、図書館で大人借りてきたハードカバータイプのドカベンを昨日一日中読んでたから今日はテレビを見るなと母に言われ、死ねえ!と思った。(子供なので本当に死ねえ!と思ってる)

ドカベンは練習シーンが殆ど無いからすごい

さようなら