ゴムボート

水木しげる

ババア

二年ぶりにばあちゃんちに行って弟にも会った。

そこではじめて弟にひとつ年上23歳の彼女がいて、同棲もしているということを知り、初耳のばあちゃんが私よりも身を乗り出りだして「結婚すんかね!?」と弟に問うていた。

よそ事のように「するんちゃう?」と答えていた。彼女が結婚を切望しているらしく、あとは己の返事次第といった風。ただし子供はほしくないってさ、と弟が付け足すとばあちゃんは「じゃあ結婚せられん」と気持ちのいいぐらいピシャリといいのけて、お!!!コレツイッターでうけるやつやんと思った。

「過酷な労働環境についての鋭い提言」と、コレ「現代の潮流を読めず、思想の刷新を怠った身内」のこの2つはいまネットの海で報告したらとてももりあがる阿牛吽形!

でも実際にさ、とうの現場に立ち会ったら、ため息もつけず、もちろん是正を求めるなんてできないで、タハハ、この人のこの部分においてはもう見限るしかないぜと、受け止めるというか、切り捨ててしまう冷たい自分を意識せざるを得なかったねえ。

私も前回ばあちゃんから同じ質問をされ、「人を愛したいという気持ちとおまえら死になという気持ちが毎秒クルクルしてる人間だから向いてない」と、諭すというより引かせることで、コレ系の話題は振るなの牽制に成功したので、もう諦められてる。「いまはね、そういう話題って繊細に扱わんとだめなんよ云々」と、書き換え成功の見込みが極めて薄いアップデート作業を援助してやるよりか、引かせることでこの件から遠ざかっててもらうように仕向けれた。でもばあちゃんみたいなのはかわいい方ではある。

プロテスタント系でもさらにハードコアな宗派に入信した母はもう、教義としてLGBTを完全に否定しているし、私がプレゼントしたSigur Rosのアルバムを最初は聴いてくれてたのに、ボーカルがゲイだと知って幻滅し、さらにそのアルバムの最後のタイトルがHeysátanで汚らわしいと捨てられた。そしていまどこにいるのか、生きてるか死んでるかもわからない。どうしようもない人をもっと嫌いにならなくてすむからその消息不明加減はちょうどいい。

ばあちゃんは「もうたぶん死んだんやろ」と言っててウケた。自分の娘にそんな臆断下せるなんてイカれてやがんぜ!じいちゃんが死んだときに、「死んだらもうゴミと同じ」とか、「結局金が一番大事」とか今の人がものすごく好きそうな言葉も言うので、そういうとこ愛してる。息むちゃくちゃ臭かったけど。それでトントンにしたろうとおもいます。なにを???

 

 

さようなら